牧野 ヒデミの創作物語 言葉の数と言葉の音符

言葉の数と言葉の音符 絵と文 牧野ヒデミ のサイトです。

ナニゴコロナシノトドノツマリハ。書評をいただきました。

          f:id:kotobano-onpu:20150327121647j:plain

桜の季節です。桜の花びら、葉っぱだってなんだかんだと美味しく食べておりますが、「本」も読むと食欲も湧いてきますよ!

読書の春もいかがですか。


某出版社さんから書評をいただいたのでUPします。


「ナニゴコロナシノトドノツマリハ

           作品講評」


連綿と続く空想の世界に迷い込んだような、ふしぎな浮遊感を味わうことの出来る物語である。

一言で表わすのなら、現代を舞台にしたメルヘンといったところであろうか。ストーリーは、あるおばあさんから「洋洋村」の絵葉書をもらった「僕」がその村を訪ねるといういたってシンプルなものだが、そこには様々な仕掛けが施されており、現実と隣り合わせに存在しているような物語世界に、読者はいつの間にか入り込んでいる。

物語の世界観、特に「洋洋村」については細部までよく練られていて、

言葉や表現の一つひとつもしっかりと吟味されている。

「憂いがあるのよね。ちょっと。こちらは、静かな色よ。水郷を思うわ。溢れ出てくる。」

ヒルガオの香りほのかに、温まりましたか?」といった台詞などは、ゆったりとした村独特の時間の流れを感じさせるものだし、茶人の会、山懐の水田、水煙、霧立ち上る厳しくも優しい水郷といったモチーフなども読み手の想像力を掻き立ててくれる。淡く柔らかな語り口はすべての輪郭を歪ませ、その曖昧さによって物語世界は際限なく広がってゆくように感じられた。

また、すべての始まりとなる「まだあるから行ってみなさい。」というおばあさんの言葉やおかしなバスの運転手など、作者は適度に奇妙なものを創造するのがうまい。ちょっと変な物、ちょっと意味深なもの、この“ちょっと”というのがポイントで、そのさじ加減が絶妙なのだ。それらを何の説明もないまま目の前にぽんっと置かれた読者は一瞬戸惑うのだが、理解できそうで出来ない、出来ないけど出来るような奇妙な感覚を味わいながら、不思議の世界への扉がゆっくりと開いてゆくのを感じるのである。『不思議の国のアリス』のように、次に起こる事が予想出来ないところ、良い意味で期待を裏切ってくれる登場人物たちの言動こそ、本作の面白さの源泉と言えるだろう。

「作品講評」終わり。


タイトル

「ナニゴコロナシノ

                       トドノツマリハ」

               作:  絵と文   牧野  ヒデミ

どうぞ宜しくお願いいたします。